東京都板橋区|鳥椿 大山店|誰か止めて! とめどなく食べてしまう、手間ひまかけた激旨チューリップ唐揚げ
チューリップ唐揚げの美味しさが見直されている
オードブルなどの料理の盛り合わせでときどき見かけるチューリップ唐揚げ。骨付き肉ですが食べやすく、見ためもかわいらしいため、かつてはパーティーやお弁当などでもお馴染みでした。チューリップに似ていることから、この名前が付いたと言われています。しかし最近はあまり見かけなくなってしまいました。
その理由は、肉を骨からはがして裏返すという作業に手間がかかる、またはかつて骨付き肉は安価だったのが、最近は骨なし肉でも同程度の価格のものが増えたため、など諸説あるようです。
しかし近年はまたチューリップ唐揚げが見直されているようで、提供するお店も少しずつ増えており、からあげグランプリではチューリップ唐揚げで金賞を受賞するお店も出てきました。年配の人たちにとっては懐かしい唐揚げのひとつと言えるでしょう。
手羽中使用の手間ひまかけたチューリップ唐揚げ
今回お邪魔した『鳥椿 大山店』は、チューリップ唐揚げを食べることができる数少ないお店のひとつ。一般的にチューリップ唐揚げは手羽元か手羽中を用いて作られます。こちらでは手羽中を使用。2本ある骨のうち、1本だけを外して肉を裏返しにしています。
この『鳥椿』では、チューリップ唐揚げを1個(90円)からオーダーできます。実はこれ、唐揚げ好きにとっては”悪魔”のようなシステムです。どう”悪魔”なのか、なにはともあれ、さっそくいただきましょう。私は今回は5個オーダーしました。
骨が肉から飛び出しているようにも見えます。たしかに一輪の花のようでかわいいのですが、味はほんのりスパイシー。衣に歯が触れたかと思うと、アツアツの肉汁がピュッと飛び出してきます。これはヤケドに要注意。ふっくら弾力のある肉からは、噛みしめるごとに肉汁と旨みが口の中になだれこんできます。飲み込む寸前にのど元で炸裂するスパイスの風味。これがたまりません。肉の旨みとともにいつまでも残って、これが次の1個への誘惑に。気が付けば5個をペロリと完食していた私。取材だったため5個で我慢するという苦渋の決断でしたが、そうでなければ「すいませーん!チューリップ10個追加でお願いしまーす!」となっていたことは必至です。
そう、これが”悪魔”のシステムです。1個食べてしまったら最後、もっと食べたくなって「あと2、3個いっとこうかな…」と思えてしまうのです。それを平らげても「いや、まだまだ。あと5個くらい…」となりかねません。そして気が付くと…。ああ、想像するとコワい(笑)。
衣は見事なまでの”薄衣”になっています。なんと粉をひとつひとつていねいに刷毛でまぶしているという手のかかりよう。厚さ薄さのムラがない素晴らしい仕上がりです。
ぼんじりの唐揚げは食べ始めると止まらない!
もうひと品、おすすめなのが「ぼんじりの唐揚げ」(350円)。ぼんじりは鶏のお尻の骨周辺の肉で、1羽から少ししか取れない希少部位のひとつ。これがバリ旨を通り越して激旨。カリッとした衣の向こうはトロンとした肉。このギャップとなめらかな舌ざわりがまた悪魔のようで、食べ始めると止まらなくなります。
歯を立てると衣が破れ、中からとろみのある肉が舌の上に飛び出してくるイメージ。ブドウの実を食べるときのような感覚に近いものがあります。私はひとりだったので大丈夫ですが、複数人のグループだったらこれは奪い合いになるかもしれません。
こちら『鳥椿』は昼飲みOKのお店です。ランチタイムにこのチューリップやぼんじりの唐揚げを味わうのもいいのですが、やっぱりビールやハイボールですね。炭酸系のドリンクで口の中をさっぱりとさせれば、このチューリップ唐揚げもぼんじり唐揚げも、無限に胃袋に吸い込まれていきそうです。
(取材年月日:2022年1月29日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。