東京都大田区|鳥からあげ うえ山|伝説の名店の味を受け継ぐ、都内屈指の素揚げの名店!
伝説の名店『奈加川』の味を受け継ぐお店
JR蒲田駅西口を出て、蒲田西口商店街のアーケードの中を5~6分ほど歩いて左折。すると東急線の踏切前に白を基調とした落ち着いた雰囲気のお店が見えてきます。白い暖簾に描かれたかわいらしい鳥のキャラクターが出迎えてくれるこちらが『鳥からあげ うえ山』。東京都内でも屈指の鶏素揚げの名店です。
かつて蒲田には『奈加川』という鶏素揚げの名店があり、地元の人を中心に愛されてきましたが、2009年に惜しまれつつ閉店。その『奈加川』のDNAを受け継ぐのがこの『うえ山』です。
希少部位「首」はぜひとも食べておきたい逸品!
カウンター席に座って「鶏 素揚げ ムネ・モモセット」(1,600円)と「首」(ひとり1個限定・200円)をオーダー。待っている間はカウンター越しに聞こえてくる素敵な揚げ音に耳を傾けます。「シュワシュワ…」という、肉の水分が軽やかに抜けていく音。いろんなお店の揚げ音を聴いてきましたが、こちらは「とろける音」とでも言いましょうか、何となく上品さを感じてしまいます。
そして肉の旨みがとけこんだかのような、なんとも言えないいい香りが鼻をくすぐります。う~ん、たまりません。満腹状態でもこの香りに包まれたとたんに胃袋がリセットされてしまいそうな魔法のような香り。
「お待たせしました。首です」。香りにうっとりとしている間に、まずはひとり1個限定の「首」が出てきました。鶏の首(せせりとも言いますね)の素揚げです。骨にもしっかり火が通っているので、そのままガブリといけます。コリポリした食感が実にいい!骨についている肉の部分はかすかにモチッとした食感で、あっという間にペロリ完食。希少部位なのでひとり1個限定は当然なのですが、そうでなければ10個くらいは食べてしまいそうです。
ムネ・モモともに無言で食らいついてしまう美味しさ
そしてお待ちかねの「ムネ・モモセット」の登場です。表面の色彩がまた美しいこと…。とくにムネ肉の断面の美しさにはほれぼれします。肉汁がにじみ出て、店内の照明に照らされてキラキラしています。
そのムネ肉を手でつかんでかぶりつきます。ムネ肉とは思えないソフトな歯ざわりで、しっとり&ほっくり食感。骨からホロリとはがれて、旨みとともにのどの奥に消えていきます。
ムネ肉がここまで美味しいのですから、モモ肉は言うに及ばず。ほどよい塩味が肉の旨みを際立たせています。表面は余分な油感がまったくなく、「パリッ!」「カリッ!」とした香ばしさのある見事な食感。肉のフワッとした歯ざわりとのギャップにやられてしまいそうです。
あまりの美味しさに無言でひたすら食べ続けた私。「骨の髄までしゃぶる」というちょっとネガティブな意味を含む慣用句がありますが、もうなりふり構っていられません。骨に付いた小さな肉片でも残すのがもったいないと思えるほどで、夢中で骨にしゃぶりついてしまったのでした。
食べ終えたら「骨スープ」というお楽しみも!
食べ終えたあとには骨だけがお皿の上に残ります。しかしこれで終わりではありません。この残った骨でスープを作ってもらえるのです(100円)。鶏の味がしっかり出ていて、そしてほのかにクリーミーで絶品のひと言。〆にはもってこいです。
ところでこちらは亡くなった先代のご主人が『奈加川』の味に惚れ込んでそれを受け継ぎ、2010年に開店したお店。いまは女将さんと娘さんがその味を守り続けています。いつ訪れても、お客さんをやさしく包み込んでくれるような雰囲気と、上品な素揚げの味わいに癒されます。何度でも訪れたくなるお店のひとつです。
(取材年月日:2023年8月21日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。