東京都世田谷区|からあげ家いっちゃん|豪快かつ繊細で上品!長野のご当地唐揚げ「山賊焼き」を本場の職人が揚げてくれる!
長野県のご当地唐揚げといえば山賊焼き。中信地方(塩尻市や松本市など)で古くから親しまれているもので、鶏の骨付き肉や一枚肉をニンニクをきかせた醤油ダレに漬け込み、片栗粉をまぶして豪快に揚げる鶏料理です。
揚げているのに”焼き”とはこれいかに!? そんな疑問が当然浮上します。このネーミングの由来には諸説あります。山賊焼きが生まれたのは第二次世界大戦前後、塩尻市内の『元祖山賊』というお店がその発祥店と言われています。当時は食用油が貴重だったため、少量の油で焼くようにして揚げていたため”焼き”と言われるようになったんだとか。また山賊が食べていたわけでも作っていたわけでもありません。松本市内の『河昌』というお店では昭和30年代ごろから山賊焼きを提供するようになったそうですが、物を取り上げる(=鶏揚げる)山賊になぞらえてこの名前を付けたといいます。その他、骨付き肉や一枚肉を揚げた豪快さを表現しているという説もあります。
豪快に揚げるまさに山賊!
最近のご当地唐揚げブームとともに、山賊焼きも長野県以外で味わえるようになりました。東急世田谷線・若林駅から徒歩1分ほどにあるテイクアウト専門の『からあげ家いっちゃん』もそのひとつで、店主の市川直美さんは長野県の出身。本場の人が揚げる本場の山賊焼きを楽しむことができます。
「山賊焼」(100g・324円)は単品でもお弁当でも購入できますが、ここは豪快に200g(648円)をいただきましょう。テイクアウト専門店ですが、この日は特別にお店の中で試食させていただきました。オーダーからおよそ7~8分で登場した山賊焼きにはちぎった生キャベツが添えられていますが、これが山賊焼きのマスト。本場・長野のお店でも山賊焼きをオーダーすれば必ずキャベツが一緒に盛り付けられています。
唐揚げの味付けはしっかり!
さすがに200gもあるとひと口でいくのは厳しいのですが、手で持って豪快にガブリといくのもアリ。「カリッ!」っという衣の爽快な音がいい。味付けは醤油、酒、ニンニク、ショウガなどで、そこに肉の旨みがしっかりとなじんでいる印象です。
肉はふっくらとした歯ざわりで肉汁まみれ。「プリンッ!」とした食感で、口の中で弾みながらツルリと滑るようです。ニンニクやショウガの風味をさわやかに解き放ちつつ、湛えた肉汁が伴走者になって舌の上を走り去ってのどの奥に消えていきます。見ための豪快さとは裏腹に繊細で上品な食感で、思わずうっとりとしてしまう味わい。山賊というよりも山城の姫君といったところでしょうか。お弁当でごはんと一緒に食べるのもいいのですが、右手にビール、左手にこの山賊焼きというのもいいですね。
さてこの山賊焼き、本場の中信地方ではスーパーのお惣菜としても売られているほか、学校給食で出されることもあるそうです。一度味わってみるとわかりますが、地元の人たちにとってはきっと自慢のソウルフードなんでしょう。
(取材年月日:2022年6月13日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。