東京都目黒区|釧路食堂|二大ご当地唐揚げ・北海道のザンギ。その発祥店で修業した店主が作る本場の味を堪能できる!
ご当地唐揚げ代表格「北海道のザンギ」
全国的な唐揚げブームの到来は、多くの新規専門店を登場させただけでなく、各地の”ご当地唐揚げ”にも光を当てました。地域おこしの一環として新たなご当地唐揚げを生み出した自治体がある一方で、古くから愛され続け、ご当地唐揚げとして揺るぎない地位を得ているものもあります。そのひとつが北海道のザンギ。釧路市にある『鳥松』がその発祥店と言われています。
『釧路食堂』で北海道のザンギを体験する
東京・武蔵小山にある『釧路食堂』は、その『鳥松』で修業した山本ごんたさんが営むお店。東京にいながら本場の、しかも発祥店のザンギを味わえるお店として唐揚げ好きの間でも大人気です。こちらでは骨なしと骨ありの「ザンギ(若鶏のから揚げ)」(各720円)が提供されています。ザンギは骨ありが基本ですが、今回は骨なしと一緒にいただくことにしました。
骨ありは、丸鶏1羽をブツ切りのようにさばいていきます。それを50年以上注ぎ足し続けているというラードで揚げていくのが特徴。モモ、ムネ、ササミ、手羽などいろいろな部位を楽しめます。
からりと揚がった骨ありザンギ。ラードを使用しているせいか、一般的な唐揚げに比べて香りが芳醇で、コクもあります。う~む、これが北海道の味なのかもしれません。衣には余分な油が残っておらず、さっぱりと、そして爽快な食感。骨ありだと食べにくい印象がありますが、それが本来のザンギ。骨の周辺は骨からしみ出た旨みが加わり、骨なしよりも美味しいのも骨ありの醍醐味です。箸では食べにくいという人は、手でつかんでワイルドにかぶりつくのもアリですね。
中でも手羽先がスゴい。普通の手羽先に比べて肉厚で可食部が多く、歯も舌も心も嬉しい不意討ちにタジタジ。しかも旨みの溶けだした肉汁がドッと流れ出てくる攻撃力に圧倒されます。旨みという名のスナイパーに味覚の中枢をズドン!と撃ち抜かれたような衝撃。こんなに美味しい手羽先唐揚げに出会ったのは何年ぶりだろうと思ってしまうほどの味と食感です。これはもう、骨しか残っていない状態になるまで、なりふり構わず無心で食らいついてしまいそう。
骨なしはモモ肉を使用しています。衣、肉、旨みがしっかりとした印象。しっとり、そしてふっくらした歯ざわりの肉に、コク深い味の衣がうまくからみ合い、噛むほどに美味しさが口の中で増幅していくよう。こってりした感じではなく、さっぱりとした美味しさで、これは何個でも食べられそうです。
さて、こちらではザンギ用の特製ソースが用意されています。「え!唐揚げにソース?」と思ってしまうかもしれませんが、それが鳥松流です。鳥松の創業者が生み出したソースを山本さんが再現したものだそうで、ウスターソースをベースに数種類の香辛料をブレンドしています。これがほんのりスパイシーな“甘香ばしい”味。さっぱりとした味わいのザンギと相性抜群です。
ザンギの由来と日本の唐揚げ文化
ところで「ザンギ」という名前の由来は何でしょうか。中国語で鶏の唐揚げを「炸鶏(ザーチー・ザーギー)」と言っていたものに「運がつくように」と、文字の間に「ン」を加えて「ザンギ」になったという説があります。またザンギと唐揚げの違いもあいまいで、味付け方法や味の濃さ、調味料などの違いだとする声もあり、明確な線引きは難しいようです。
しかしいずれにしても、ザンギが北海道で生まれ、北海道の人たちに育まれつつ長い時間をかけて独自に進化を続けてきたご当地グルメであることは誰もが認めるところ。中津唐揚げと並ぶ、日本の二大ご当地唐揚げのひとつとして、これからも唐揚げ愛好家たちに支持され続けていくでしょう。
(取材年月日:2022年5月20日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。