東京都葛飾区|鳥房|芳醇な香りと肉の旨みにKO!名店で味わう病みつき必至の半身揚げ
葛飾・立石の、香り立つ半身揚げの名店『鳥房』
東京屈指のディープな飲み屋街のある、葛飾・立石。京成立石駅を出ると、すぐに視界に飛び込んでくるのが鶏半身揚げの名店『鳥房』です。お店が見えるのと同時に漂ってくるのは、得も言われぬいい香り。いや、もうそんな簡単な言葉では表現できないほどの、芳醇かつ妖艶な香りが辺り一帯にたちこめています。
店頭では、大きな鍋で鶏の半身を揚げている様子を見ることができます。香りの発信源はこれ。肉の旨みやそれが溶け込んだ揚げ油など、あらゆる美味しさの要素が融合して気体化したかのような香りが、道行く人たちの嗅覚をメロメロにしてしまいます。この香り、他では体感できないでしょう。
店内へは脇の小道にある入口から入ります。16:00の開店前から、すでに行列ができるほどの人気ぶり。待っている間もこの香りに包まれ続け、それは快楽であると同時に、空腹時ならばほとんど拷問に近いとでも言えるのでは。
店内のルールと名物「若鳥唐揚」の魅力
さて『鳥房』にはいくつかルールがありますが、さほど難しいものではありません。
①酔客は入店できない(素面で行きましょう)
②「若鳥唐揚」をひとり1個は注文しなければならない
③座敷のテーブル席ではあぐら厳禁。荷物や上着はテーブルの下に置く(ひとりでも多くのお客さんが座れるようにするため)
しっかり守って、楽しく美味しく唐揚げを味わいましょう。
名物の「若鳥唐揚」は時価。これはその日の仕入れ状況によって肉の大きさが変わるためで、500円台~700円台の間で20円~30円きざみでランク付けされています。私が訪れたこの日は680円と700円。当然700円をオーダーしました。
20分ほどで登場した「若鳥唐揚」、揚げたて特有の香ばしくも豊かなコクすら感じる香りが、湯気に混じって私の顔を襲ってきます。う~ん、たまりません!「たまらない」という言葉は、こういうときのためにとっておきたいものです。
紙ナプキンと割り箸を使って、いざ肉を解体。解体方法がわからない人は、店員さんにお願いすればやってくれるので心配ご無用です。私は何度も通って店員さんに教えてもらいつつ、編み出したやり方で解体。手羽先の下を割り箸で抑えて、骨付きモモの足部分を押し上げるようにして開くと、閉じ込められていた肉の香りが湯気とともに、解き放たれたかのように立ちのぼります。
衣を付けない素揚げです。しかし表面の皮はカリッと香ばしく、肉の旨みがしっかりしみ込んで、これだけでおつまみやおかずになりそう。ムネ肉はしっとり&ほっくり。肉汁まみれのモモ肉は舌の上をツルツル滑るかのようです。歯を入れると、旨みが一気に炸裂。それが歯の神経にまで伝わるようで、美味しさが全身を駆け巡ります。食べ進めると肉の風味が鼻から抜けていき、舌も鼻もとろけそうに。
一度食べ始めると食欲に火が付いてしまって、もうブレーキが利きません。無心になって食らいついてしまいます。しっかり揚がっているので、骨までバリバリと食べることができるので、残さず食べてしまいたいところ。グループで来店した場合は全員がカニを食べているときのように無言になってしまうのは必至でしょう。
「鳥房」の半身揚げの特長と病みつきになる理由
ところで半身の素揚げは、
(1)モモ、ムネ、手羽先などいろんな部位の味を楽しめる
(2)衣を付けていないので余分な水分が抜けやすく、ジューシーに仕上がる
(3)片栗粉などを使用しないので糖質オフ
などの特長があります。『鳥房』の半身揚げも、ふっくら、そしてジューシーに仕上がっています。
解体時に湯気が顔を包んだとき「玉手箱を開けてしまった浦島太郎ってこんな状態だったのかな…」などと思ってしまったのですが、これはまんざら冗談ではありません。一度食べたら病みつきになってしまう“禁断の味”がそこにあるのです。
(取材年月日:2022年4月16日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。