東京都中央区|から揚げ専門店 くにちゃんずキッチン|子どもたちに“唐揚げのおじさん”と呼ばれる店主が考案 体も心も満たされる「ぶっかけ丼」
ジャンボ唐揚げが5個のった唐揚げ版ひつまぶし?
「ありがとう!ごはん、足りた?」
「いってらっしゃい!仕事がんばって!」
店主の明るく元気な声が店内に響きます。声をかけられた若いお客さんも「ごちそうさま!」と元気よく応えてお店を出ていきます。それを聞いているこちらも、なんとなくほっこりした気分に。
ここは東京・新川にある『から揚げ専門店 くにちゃんずキッチン』。界隈のビジネスマンに人気のお店で、ランチタイムは若い男性客も多数訪れます。夜は居酒屋、昼は唐揚げを定食で味わえるお店で(夜営業は現在は中止)、ランチタイムで人気なのはこちらの名物でもある「ぶっかけ丼」(790円)。ごはんの上に唐揚げをのせ、そこに鶏スープをかけて食べるもので、“唐揚げ版ひつまぶし”といったところでしょうか。
1個50~60gほどはありそうな、大ぶり唐揚げが5個、丼にドドンとのっかっています。そこに肉みそ、刻み海苔が添えられ、別の器で鶏スープとワサビが提供されます。たしかにこれは、若い人にはたまらないボリューム感。「体が温まって、お腹いっぱいになれるものを」と、店主の丸山邦夫さんが考案したメニューです。
食べ方は2パターン。好きな食べ方でどうぞ!
このぶっかけ丼、おすすめの食べ方が2通りあります(店内に詳しいガイドあり)。
(1)鶏スープを一気にかけて食べる
(2)まず唐揚げとごはんを混ぜて食べる。次に鶏スープをかけて食べる。そしてワサビや七味を加えて食べる
スープを一気にかけて食べるパターンと、段階的に味変を楽しみつつ食べるパターンがあるのですが「お好きな食べ方でどうぞ。その人が『美味しい!』と思える食べ方が正解なんです」と丸山さん。味変マニアの私は、上記(2)のパターンで食べてみました。
まずは唐揚げ。見事な揚げ具合で、衣はカリッカリです。やわらかい肉とのギャップが実にいい。「パリッ!パリッ!」と砕けながら肉の中に吸い込まれていく衣の爽快な歯ざわりがたまりません。飲み込む瞬間に、肉の旨みと醤油の香ばしい風味が口の中を席巻します。う~ん、やっぱり唐揚げはこうでなくっちゃ!唐揚げ特有の幸福感がMAXの瞬間、さらなる食欲を引き出してくれます。ごはんにもその唐揚げの味がほんのりとしみていて美味。一気にかき込みたくなる衝動を抑えて、鶏スープを投入します。
スープをかければ高級鶏雑炊に変身!
鶏の旨みがよく出た、ちょっぴりスパイシーなスープです。これまた気をつけていないと、そのまま飲み干してしまいそうに。スープをすべてかけてごはんを食べてみると、これがちょっと高級な鶏雑炊に変身します。そのまま食べたときはあっさりしている印象だった肉みそが、スープをかけたとたんに別人のような働きぶり。肉みそのほのかな甘みが鶏の旨みを見事にアシストしています。刻み海苔が引き出す磯の風味も手伝って、豊潤な味わいのごはん。もはや唐揚げ版のひつまぶしと言ってはいけないような気になってしまいます。さまざまな旨みがしみ出したスープが唐揚げの衣にもしみ込んで、こちらもまた美味しさ数倍増しです。
ワサビを加えると、やさしい刺激が出てきます。さらに七味を加えると、逆にアグレッシブな刺激が舌を襲います。鶏スープと七味って合うんですねえ。最初から七味をかけて食べればよかったとちょっと後悔の念が芽生えたころにはすっかり完食していた私です。
食べ終えてご主人の丸山さんと話し込んでいると、店外から子どもたちの元気な声が。すぐ近くに小学校があり、そこの子どもたちのようです。その声を聞いた丸山さん、おもむろにお店の外へ。
「唐揚げのおじさん、こんにちは!」
「こんにちは!みんな元気?」
ええ~~~!!!唐揚げのおじさん???子どもたちからそう呼ばれていたなんて!丸山さんと子どもたちの楽し気な会話が聞こえてきました。
「子どもたちは大切な存在だから」と丸山さん。お店の前を通る子どもたちには積極的に声をかけているそうです。“見守り”の意味もあり、子どもたちを犯罪被害から守ることにもつながるようです。冒頭で触れた、お客さんへの声かけも「元気でがんばってほしいから」との思いがあるからとのこと。唐揚げの味だけではなく、丸山さんの人懐っこさも、このお店の魅力なのでしょう。
場所柄、他の地域からやってくるビジネスマンのお腹を満たすお店かと思っていましたが、それだけではないようです。地域にもしっかり根差している、そんな唐揚げ専門店なんだと感じました。
(取材年月日:2022年2月21日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。