「ギャートルズの肉」とも呼ばれた200gの素揚げ

東京・亀戸にある『亀戸 養生料理 高の』は、店主の高野定義さんと妻の和美さんが夫婦で切り盛りする、蕎麦やジビエ料理を楽しめるお店。実はこちら、唐揚げも人気で、200gのモモ肉に串打ちし、塩のみで味付けして素揚げした「丸丸素揚げ」(430円)が好評です。そのフォルムがマンガなどに出てくる巨大な骨付き肉に似ており、販売開始当初は「ギャートルズの肉」という別名もあったほど。そう、私と同世代の人ならばわかるでしょう。1970年代にはアニメ放送もされていた『はじめ人間ギャートルズ』によく登場した、骨付き肉をイメージしたものです。当時の私もアニメをみながら「こんな肉、食べたいなあ…」と思っていました。ちなみに今の若い世代のお客さんの中には「アラレちゃんの肉」「ルフィの肉」と呼ぶ人もいるそうです。
この丸丸素揚げ、2018年開催の第9回からあげグランプリでは素揚げ・半身揚げ部門で金賞を受賞。そのころ私も幼い日の夢をかなえるべく、食べに行ったものです。あれから3年、再びお店を訪れ、この丸丸素揚げをいただきました。

夫婦ふたりで育ててきた丸丸素揚げ

オーダーから5～6分で出てきた丸丸素揚げ。フォルムはたしかにマンガに出てくる“あの肉”です。アニメのキャラクターたちのように、串を持って豪快にかぶりつきたい衝動にかられます。揚げた鶏肉の何とも言えない豊かな香りがマスク越しに漂ってきて、食欲我慢は限界に。まずは串を持って、肉をふたつに割ってみます。立ち上る湯気と断面にあふれる肉汁、そして肉の香り。この時点で私の食欲は制御不能状態。ギャートルズの主人公・ゴンのように、ガブリといきました。

表面の皮はパリッパリに仕上がっています。肉汁まみれの肉はしっとり食感。味付けが塩のみのため、鶏肉のうま味をしっかり感じることができます。3年前も美味しかったのですが、今食べているものはそれよりもさらに美味しくなっている印象です。
店主の高野さんはこの丸丸素揚げを「妻とふたりで生み、育ててきました」と話します。第9回からあげグランプリで金賞を受賞した丸丸素揚げですが、翌年開催の第10回では惜しくも入賞できず。「それがとても悔しかったんですよ」と高野さん。そこから研究を重ね、第11回では再び金賞に輝きました。
「この丸丸素揚げを、嗜好品としての“大人の唐揚げ”に育てていきたいんです。おじいちゃんでも食べられるような、地酒に合う唐揚げを目指しています」と高野さんは話します。

肉への串打ちは意匠登録出願中

さて高野さん、この丸丸素揚げを専門の機関に依頼して、栄養成分を調査したそうです。一般的なモモ肉唐揚げ200gと比較した場合、エネルギーは約68%、たんぱく質は約96%、脂質は約73%、炭水化物は約10%、食塩相当量は40%と（注）、ヘルシーなものになっているそうです。衣をつけない素揚げなので、炭水化物は大幅減。たんぱく質はほぼ同じです。「アスリートにいいかもしれませんね」と高野さんは笑います。

また肉への串打ちは意匠登録出願中とのこと。美味しさの追求だけでなく、新たな目標を定めて常に邁進しているお店と言えそうです。次回訪れたとき、この丸丸素揚げの美味しさがどこまでアップデートされているのか、楽しみです。

（注）『亀戸 養生料理 高の』公式ウェブサイトで公表されているデータにもとづく
(取材年月日：2021年11月19日)

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