埼玉県草加市|インどり屋 草加駅東口店|元ボートレーサーが生み出した草加せんべい使用のご当地唐揚げとは?
草加せんべいを使ったご当地唐揚げとは?
ソースを使った「佐野黒から揚げ」や、ピーナッツを使った千葉の「みそピーから揚げ」など、地域の名物や特産品を使用したご当地唐揚げが増えています。今回ご紹介する唐揚げもそのひとつと言えるでしょう。
埼玉県草加市にある『インどり屋』は、元ボートレーサーの細田昌弘さんが営む唐揚げ専門店。ボートレースでインコースをとりにいく選手のことを「イン屋」と言うそうで、それをニワトリの「鶏」とかけた、ユニークな店名です。地元の名物・草加せんべいを使った「そうからあげ」が人気なのですが、どんな唐揚げか想像できるでしょうか?
メニューには手羽先や砂肝、軟骨などさまざまな部位がありますが、ここは王道のモモとムネをいってみましょう。どちらも唐揚げの量でS・M・L・XXを選ぶことができます。
インどり屋・草加駅東口店
せんべいの風味がニンニクや肉のうま味と相性抜群
オーダー後、数分で出てきたのはM(590円)。ルックス的は“せんべい感”はない一般的な唐揚げですが、ひと口目でナゾが解けます。まずはモモ肉から実食。パリッと爽快な衣には、かすかなモッチリ感。その衣がニンニクをきかせた秘伝のタレに漬け込んだ柔らかい肉と徐々に混じり合っていくうちに、“あるもの”が姿を現します。そう、せんべいの香ばしい風味が口いっぱいに広がるではありませんか!「せんべい粉を衣に混ぜています」とオーナーの細田さん。草加せんべいを粉末状にしたものを片栗粉などとブレンドしているそうです。噛み進めるほどにチラチラと現れるモッチリ感の正体もこれでした。
そうからあげ・モモ
このせんべいの風味が実にいい。ニンニクの味もガツンと来るものではなく、マイルドなもの。せんべいの香ばしさとよくマッチしています。飲み込む寸前にのど元を席巻する肉のうま味に、つい次の唐揚げに箸がのびてしまいます。
ムネ肉は、特有の固さやパサつきはなく、しっとり柔らかく仕上がっています。こちらはニンニク不使用で、女性に人気の唐揚げです。こちらもせんべいの風味があっさりめの肉の味にいいアクセントを与えています。
そうからあげ・ムネ
味付け玉子の唐揚げ「エッグボンバー」もオススメ
さてもうひと品、珍しい唐揚げをいただきました。その名も「エッグボンバー」(1個・200円)。ダシで味付けした半熟ゆで玉子に衣をつけて揚げた、味付け玉子の唐揚げとでも言えそうなものです。「いきなりガブリといくと爆発しますよ」と細田さんは笑います。なるほど、だから“ボンバー”なんですね。箸で慎重に割ると、キラキラ輝く黄身がトロ~リと流れ出てきます。濃厚な黄身の味に和風ダシが絶妙にからんで、ぜいたく感いっぱいの玉子といったところ。これは1個では物足りない!
最後に唐揚げを美味しくするコツを細田さんにうかがったところ「それは愛情ですよ」との答え。なんとも抽象的ですが、マニュアルにとらわれ過ぎないことだといいます。「揚げ油に入れるときも『さあ、お風呂でゆっくりあたたまってね』と語りかけるんです。のぼせそうだったらすぐに油から取り出してあげるんですよ」。そうすることで揚げ時間の過不足はなくなり、ちょうどいい揚げ具合に仕上がるんだとか。「食材も生きている」という細田さん、味の探究にも余念がなく、そうからあげやエッグボンバーのような新しい味の登場に今後も期待できそうです。
エッグボンバー。箸でゆっくりと割ると、キラキラした黄身がトロリと流れ出てきます
(取材年月日:2021年8月16日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。