東京都中野区|野方食堂|白飯のアシスト必須!創業85年の老舗食堂の正統派「おかず唐揚げ」
ごはんがすすむ!味付けしっかりの名物唐揚げ
西武新宿線・野方駅から徒歩1分弱にある「野方食堂」
私は常々「唐揚げは4つの“お”を持つ万能食」と言っています。唐揚げは「おつまみ」「おかず」「おやつ」「おみやげ」にもなるため、それぞれの頭文字の「お」を取ってそのように表現しているわけですが、今回ご紹介するのは「おかず」としての唐揚げです。
やって来たのは西武新宿線・野方駅。南口を出て徒歩で1分弱にある『野方食堂』は、昭和11年の創業以来、地元の人を中心に愛され続けている庶民的な定食屋さんです。親子3代にわたって受け継がれているお店で、さば味噌煮定食、肉じゃが定食、オムライス、ナポリタンなど、美味しそうなメニューがなんと100種類以上。何度も訪れてすべて食べ尽くしてみたいと思ってしまうほどです。この日はピークタイムを外してお邪魔したのですが、店内のほとんどの席が埋まっているという盛況ぶり。こちらで特に人気なのが「とりから定食」(810円)。2代目店主の時代からメニューに加わったそうです。モモ肉を使った唐揚げの定食で、日本唐揚協会主催・からあげグランプリで金賞受賞歴もあります。
「とりから定食」(810円)。
ごはん、味噌汁、お新香、煮物も付いています
漬け込み時間や揚げ方など、美味しさのポイントをガッチリ抑えた調理法
唐揚げは1個が40g以上はありそうな大きめサイズ。それが4個も盛り付けられており、唐揚げ好きならば見ただけで嬉しくなるでしょう。肉は醤油やニンニク、ショウガ、みりん、砂糖などで作ったオリジナルのタレをもみ込み、さらに3日間じっくりと漬け込んでいます。このタレも長い年月をかけて開発したものだそうで、まさに伝統の味と言えそうです。
2度揚げされており、片栗粉のみの衣は「パリッ!」と爽快な食感です。しかし口の中で数回咀嚼していくうちに「シャリッ!」とした歯触りに変化していき、これが何だか楽しい。味変ならぬ“食感変”でしょうか。ニンニクやショウガの風味はガツンと来るものではなく、やさしくマイルドに迫ってくる印象。肉にはかすかなとろみもあって、これが最高の舌触り!たっぷりの肉汁とともに口の中に怒涛の如く流れ込んでくるうま味がたまりません。白いごはんのアシストが欲しくなる唐揚げで、まさに正統派の「おかず唐揚げ」といったところです。
1個40gほどもある大きめサイズの唐揚げです
漬けダレに3日間も漬け込んでいるというだけあって、味のしみ込み具合も絶妙。肉もやわらかくジューシーに仕上がっています。唐揚げを美味しくするポイントを完璧に抑えていますね。
3代目店主の美味しさへの探究心に感服
断面を見ると、肉汁たっぷり!ここにうま味が溶け込んでいます
この「とりから定食」がメニューに登場した当時は、甘酢をかけて油淋鶏のようにして提供していたそうです。しかしお客さんの好みに合わせて味に改良を加え、現在のようなスタイルになったといいます。3代目店主の斉藤公和さんによると、今でも研究は怠らないそうで、より美味しくするためにいろいろと工夫をしているとのこと。伝統を受け継ぎつつ、新しいことを試みるのは難しいものですが、美味しさの追求という意味では“伝統の発展”と言えるかもしれません。
ちなみにこちらの野方食堂、ディナータイムに行けば、唐揚げをビールと一緒に楽しむことができます。「おつまみ」にもなる唐揚げですね。
(取材年月日:2021年10月23日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。