東京都港区|やきとり宮川 赤坂|老舗焼鳥店の見るも美しい白い唐揚げ!原点はおふくろの味にあり!
唐揚げ専門店じゃない唐揚げとは
「専門店以外で美味しい唐揚げが食べられるところはありますか?」
こんな質問をよく受けます。その場合たいてい私は、精肉店と焼鳥店を挙げます。いずれも肉を専門に取り扱うだけに、唐揚げも美味しい。とくに焼鳥店は鶏肉の扱いに精通しており、高確率で美味しい唐揚げに遭遇できます。
1949年に東京・日本橋で鶏肉専門の卸問屋としてスタートした『やきとり宮川』は焼鳥だけでなく名物の「白いからあげ」も人気。唐揚げといえばキツネ色をイメージしがちですが、それだけに”白い”と聞けば一体どんな唐揚げなのか、興味をそそられることでしょう。
お邪魔したのは2017年にオープンした『やきとり宮川 赤坂』。「白いからあげ」は4個、6個、8個から選べ、いずれもモモ肉とムネ肉が同数の合い盛りです。私がいただいたのは6個(1,380円)。
見るも美しい白い唐揚げ!
まずは写真をご覧ください。一般的な唐揚げに比べて白いのがおわかりいただけるでしょう。専門店の中には、表面にほどよい揚げ色をつけたり、肉の旨みを油に溶け込ませたりするために、揚げ油を何度も繰り返し使っているところがありますが、その点、こちらは違うようです。揚げ油は毎日交換して鮮度の高いもので揚げているとのこと。なるほど、それでこんなに白い色に仕上がるんですね。
兎にも角にも食べてみましょう!
さっそくムネ肉からいってみましょう。衣はサックリとした歯ざわりです。国産の片栗粉とコーンスターチをブレンドした衣で「シャリッ!」という咀嚼音を奏でます。ざらめ雪をなでるようなやさしく心地よい食感。肉もしっとりやわらかく、本当にムネ肉なのかと思ってしまうような味わいです。肉の旨みを存分に感じられ、ムネ肉だと言われなければ、モモ肉だと思い込んで食べ進めてしまうかもしれません。
一方のモモ肉は、ムネ肉よりもこってり感があります。じわじわ出てくる肉汁に溶け出した肉の旨み。それが噛むほどに舌の上にトロリと張り付きます。後を引く美味しさとのはこのことでしょう。ほんのりと口の中に残る旨みが消えてしまわないうちに、次の1個を味覚が欲してしまう魔力を秘めた唐揚げ。あっという間にモモ肉3個をペロリでした。
この唐揚げは味付けも至ってシンプルです。海水の栄養分が豊富な雪塩を水に溶かし、それに1時間ほど漬け込んだだけ。だからこそ、やわらかな肉質と鶏肉本来の旨みを堪能できるんですね。
味変用にオリジナルのポン酢と2種類の自家製調味料が用意されています。ポン酢は4種類の柑橘類と銚子の醤油を使っており、酸味はややひかえめでさっぱりとしています。「黒八味」は唐辛子やあさの実、みかんの皮など8種類の薬味を焙煎したもの。唐揚げにふりかけて食べるとコクが増す印象です。「完熟赤山椒」は和歌山県産の完熟した赤山椒を使用したものです。付け過ぎると刺激が強くなってしまいますが、軽くふりかければ唐揚げにクール感が出てきます。
原点はおふくろの味
この白い唐揚げは、もともとはこちらの社長さんのお母さまの手料理だったものだそうです。始まりが”おふくろの味”だったんですね。そういえば、ある著名な唐揚げ愛好家がこんなことを言っていたのを思い出しました。「人生で一番美味しいと思った唐揚げは母の作る唐揚げです」。専門店などが研究を重ねて作り出した唐揚げも美味しいのですが、凝ったことをしない、飾らない味付けにこそ美味しさの真髄があるのかもしれません。
(取材年月日:2022年7月25日)
松本 壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」大分県中津市。年間のからあげ摂取量は300食以上。『食楽web』(徳間書店)、『bizSPA!フレッシュ』(扶桑社)などでからあげの取材記事を担当する。